もうヘッドホンはいらない:Technics EAH-TZ700 レビュー

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もうヘッドホンはいらないかも。もちろん他のイヤホンも。本気でそう思いました。Technics EAH-TZ700。これほど感動したのは、昔Shure SE215を初めて聞いて以来です。

実はFitEar To Go 335が低域がいいというので期待して聴きに行ったら、高域がモソモソしていて全然だめ。リスニング向けではありませんでした。

で、手持ち・お店のイヤホンを並べて比べてみたら、以下の順で自分の好みでした。

EAH-TZ700 > A8000 > Kaiser 10U ~ SE846 > T8iE mkII >> SE215 > FitEar To Go! 335

EAH-TZ700を聴いた印象は以下の感じ。

  • 低域も高域も他のイヤホンよりレンジが広い。
  • ヘッドホンがいらないと思わせる低域の伸び。本当にこれは聴くべき。
  • それでいてマルチBA以上と思わせる、澄み切った高域の美しさ。
  • 透き通っていて、それでいて冷たくない印象。

A8000も良かったけど、低域に明確に差があったかな。A8000は、一回聞いたらまあそうかという感じで、特に食指は動きませんでした。

試聴するときは、だれでも自分の音源で聴くでしょうから、あくまで参考ですが、私の場合最低限以下のような曲を聴いています。

Future Pop - Future pop, Fusion初めのあたりの低音とか。2曲目Future pop冒頭、ギターの弦が切れ味良くはじかれている感じ、続いて左側に入る「ズーン」という低音の大小を聴いています。いや、音の大小ではないですね。ボワーンと左側いっぱいに広がってもNGで、どこまで深く低域方向に沈み込んでいくか、という聴き方でしょうか。

16 Century Discotheque - 22曲目Intradaの冒頭、パイプオルガンの低音とハンドベルの「チリリーン、チリリーン」という高音で始まるという極端な構成。両方満足できれば、音の再現範囲としてはだいたいOKでは?と思っています。ベルはもちろん聞こえるでしょうけど、ブレスの古いベルのような渋い感じに聞こえるなら不十分かな?

J.S.Bach: Violin Concertos - 11曲目、BWV1060 - 2 adagio。背景にそっと広がる楽器の音。ここではメインのオーボエとバイオリンよりもそちらが気になります。この広がり方が、DAP&イヤホンで全然違うのが面白いところ。T8iE mkIIなんて最高でしたね。

Live in Capalbio 3.0 - 楽しいイタリアのバンドのライブ。録音もいい。冒頭の左右で鳴き交わされるブーブービービーという笛が楽しい。そのあと始まる演奏も各楽器がきっちりタイトに聞こえればOK!あとは陽気な演奏を楽しみましょう。

Don't you cry - ワンポイントマイクでの女性ボーカル。各楽器が個々に把握できるか? 声の美しさは?

Nightbird - 女性ボーカルのライブ録音。歌はもちろんですが、暗騒音含めたライブ会場の雰囲気が感じられるかどうか。遠い昔テープの時代はノイズの大小が半分決め手でしたが、デジタルの時代に残るノイズはほとんど会場や録音由来なので、むしろライブ感の一つと思えるようになりました(あきらかな機材由来は別として)。このアルバムではホールの空間が感じられる気がします。

Tchaikovsky - Violin Concerto - 以前聴いたベルリンフィルのコンサートの再現性。ここは音質云々ではなく、実際にライブで聞いたコンサートの感動がよみがえるか否か=完全に個人的なチョイスです。いくら高音質を追求しても、やっぱりライブの体験・感動には遠く及ばないですから、それを追体験したいと願うもの。とはいうもののの、このアルバム96/24で出してくれないものか...。Janine Jansenの演奏の力強さ、テンポの良さがたまらないです。繊細さでは他にもいいアルバムがいくつかありますけどね。

EAH-TZ700、シングル一発でも、いやシングル一発だからこそ、突き詰めるとここまでの音になるんですねえ。他のイヤホンの個性というのは、実は理想の音に至らない部分が表れているだけなのでは? とさえ思えてきます。イヤホンの個性ではなく、音楽そのものを追求するなら、いまこれが最もその領域に近い気がしました。(もちろん、あらゆるイヤホンを聴いたわけではありませんけど) 

-Technicsの製品サイト
-SoundStage!のレビュー
-AV Watchの記事


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