Violectric V280かTopping A90か? ヘッドホンアンプの出力はどれだけあれば十分?

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Dropに、ハイエンドヘッドホンアンプ Violectric V280 が大幅値引きで出ています。以前一度出て終了したのですが、販売が好調だったので再募集したそうです。

▶Drop.comのV280のサイトはこちら

V280はニュートラルなトーンと盤石の大出力が魅力のヘッドホンアンプで、以前から気になっていました(プリアンプ付きのV281の方が多少メジャーですが、V280の方がシンプルです)。しかし、最近のTHX AAAアンプ, Topping A90, Geshelli LabsのErish Balancedなど、低価格でクリーンな音と大出力を売りにする新世代(?)アンプの登場とその価格から、どうするか悩んでいました。そのため、A90とどっちの出力が大きいのかな?と思って比べ始めたら、面白いことに気が付きました。

まず、V280、A90、その他ヘッドホンアンプいくつかについて、公開されている仕様から、負荷(インピーダンス, Ω)と出力(W)の関係をグラフにしてみます。(公開されているのはいくつかの値のみで、線はExcelによる自動補完です。)

まず、右側の高インピーダンスの領域では、オレンジのV280の出力が他を圧倒して高出力であることが分かります。これはすごいですね。一方で左側の低インピーダンスの領域では、A90がV280を上回ります。A90は50Ωと100Ωの出力が公開されていないので推測するしかありませんが、70Ωあたりが逆転するポイントでしょうか。

このグラフだけ見ると、V280が大方の領域で他を上回っていて圧倒的に優れているように見えるなー、くらいしか分かりませんが、縦軸を電圧(V)に変換し、さらに、各社のヘッドホンの感度(能率)をベースに計算した、120dBの大音量を出すのに必要な電圧を重ねてみると、なかなか面白いグラフになります。

ヘッドホンの分布をみると、インピーダンス50Ω付近に、Hifimanの平面磁界型ヘッドホンによる必要電圧のピークがありますが、その前後にはそのようなヘッドホンはありません。ただし、450Ω以上の領域に再び高電圧が必要なヘッドホンが出現します。AKG K240 (600ohm)を考慮するかどうかはさておき、おおよそHE6se (&Susvara)、HE560、DT880の3つが、高電圧を必要とするヘッドホンの大枠になるでしょうか。そして、どのアンプ(もちろん大出力のものを選んでいます)も、極力これらをカバーする曲線になっているということに気が付きます。ただし、薄いブルーのLuxman P-750uは、16Ωから600Ωまで完全にフラットな電圧で、他のメーカーと様相が異なります。確固とした設計思想があるのだろうな、と思いたくなりますね。

さて、これからすぐ、以下の2点が頭に浮かびます。
  • もしHifimanの低感度なヘッドホンがなかったら、もっと低電圧なスペックが普通の世界になったのではないか? まあそれは過去のことなので想像上の話でしかありませんが、もう少し一般化すると、ヘッドホンアンプがどの程度のインピーダンスと電圧をカバーするかは、世の中のヘッドホン/イヤホンのトレンドに依存するということになりそうです。
  • オレンジのV280は、高インピーダンス領域での電圧スペックが非常に無駄ではないか?600Ωの鳴らしにくいヘッドホン2つに対して、必要なパワーをはるかに上回る数値になっています(実際にはゲインを設定できるようですが、存在しないスペックのヘッドホンまでカバーするハードウェア資源は不要に思えます)。
    さらに、今年発売になった最新のヘッドホンアンプV590(グレーの点線)が、V280(オレンジの実線)とは大きく異なり、むしろTopping A90(濃いブルーの実線)に近いため、なおさらそう思ってしまいます(約100Ω以上で出力電圧がフラットになったことを指しています)。もし必要な性能あるいはセールスポイントなら変更するはずがありませんから、もしかすると、V280設計時点では必要と判断したのが、近年のヘッドホン/イヤホンの低インピーダンス化・高感度化のトレンドから、多少変えたのかもしれません。

新しいV590もV280と類似の特性なら、Violectricのポリシーかもしれませんが、どうもそうでもなさそう。となると、今後実際には使わない高出力にお金を払うのは抵抗があるし、新世代のアンプにも興味がありますので、なんとかV280を思いとどまっています。ディスカウントの割合だけ見ると「チャンス」なんですけどね~(絶対的な金額はとても高価ですが…)。

と、理屈では上記の通りなのですが、無駄だろうが何だろうが、あらゆるヘッドホンを駆動してしまう大パワーの魅力が大きいのも事実。ある意味、あきらめるための理由探しにすぎないのかもしれません。大排気量エンジンのスポーツカーみたいな感じ、でしょうか。

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