TOPPING E30 DACレビュー
これまでDACはiFi Audio iDAC2を愛用していました。コンパクトなのに音質は非常にクリアでリスニングにはもってこい。サイトの製品解説を見ると、こだわりの設計にそれだけでほしくなってしまいます。一つだけ難があるとすると、USBバスパワーなのでDAPからOTG接続で使えないことくらいでしょうか(給電機能付きOTG USBケーブルを使えばいいのですが、線がごちゃごちゃするのも嫌なので)。
DAPから手軽にヘッドホンアンプにつなげたいことと、最新DACチップで音質の進歩があるか興味がわいてきたので、久しぶりにDACを探してみました。DACはデジタルデータをストレートにLINE出力してくれれば十分、機能は極力シンプルに、が私の考え方です。DAC機能自体はDACチップに集約されていますから、電源周りと最後のアナログ部分の設計さえしっかりしていれば、安い機器で十分なはず。デジタルですからね。
TOPPING E30のスペック
色々調べていて目に留まったのが中国TOPPING社のE30。Audio Science Reviewでの測定結果がとてもいいです。(※私はほとんどの国内オーディオ評論家や店舗のレビューは参考程度にし、あとはもっぱら濃密な海外の有力サイトで調べて決めます。)
Topping E30 DAC Review
https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/topping-e30-dac-review.12119/
https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/topping-e30-dac-review.12119/
iFi iDAC2との音質比較
CDレベルの44.1khz音源だとデジタルフィルタの影響が大きいので、DSD128とDSD256で2機種を比較しました。
iDAC2の方が少し高域よりというか、繊細さ・華やかさが感じられる印象です。逆にE30の方が低域~中域ががっしり充実という見方もできます。個人的にはiDAC2の方がオープンな広がりを感じるので少し上かなという印象ですが、E30も明らかに劣ることはなく、曲とのマッチングによりE30がいいという場合も十分あります。この低価格で音質に大きな不満が出ないのは、最先端DACチップと、中国メーカーの設計能力向上のたまものといったところでしょう。もちろんバックグラウンドノイズもありません。(※USB電源はiPadの「白いやつ」を使用)
デジタルフィルターはどれがいい?
44.1khz音源の場合はデジタルフィルター選びが重要です。E30のデジタルフィルターはAK4493内蔵のものをそのまま使っていますから、6種類あります。取説に説明はありません。選択の手掛かりくらいは書いておいてほしいところです。以下のAK4497の記事が参考になります。
<CES>AKMの開発担当者に聞く、新フラグシップDAC「AK4497EQ」の詳細
位相と周波数の特性を考えると、新しいF-6 Low-dispersion short Delay Filterが良さそうです。F-5 Super slowもちょっと気になりますが、特性がよくわからないのでF-6を使っています。楽器の定位や空間の再現性を考えると、できるだけ位相特性を大事にしたいので。
AK4493のデジタルフィルター
上でデジタルフィルターが6種類あるのに2種類は他と同じと書きました。振幅特性だけ見ると確かにそうなのですが、実はこのグラフに表れない大事な違いがあります。F-2 Slow Roll-offとF-4 Short Delay Slow Roll-offを例にとると(データシートでは群遅延が違うくらいしか分かりませんが)Short Delayの方は「プリエコーがないがその分位相に影響が出る」という性質があります。「音自体はシャープになるが楽器の空間配置や反響に影響が出る」と言い換えてもいいでしょう。ただし一聴して分かるほどの極端な違いではありません。
したがって、通常ならF-2 Slow Roll-offをお勧めしたいところですが(若い方で可聴域ぎりぎりの高音への悪影響が気になる方以外は)AK49xxシリーズならF-4 Short Delay Slow Roll-offがお勧めかなと思います。プロの試聴で特性を決めているようなので、気にならない程度の位相への影響は許容して音の鋭さを取るということで。でもせっかく旭化成が各種特性のバランスを実現したというので、F-6 Low-dispersion short Delay Filterをしばらく使ってみようと思います。で、耳が慣れた頃にF-4 Short Delay Slow Roll-offと比べてみると。
→やっぱりF-4 Short Delay Slow Roll-offかな。F-6 Low-dispersion short Delay Filterはほんの少しだけこもり気味になる感じが...。いや、曲によりますね。F-4かF-6としておきます。ちなみに、音色や音の立ち上がりを聞き分けようとしてもなかなか難しいです。音の広がる空間の雰囲気の違いを意識すると、デジタルフィルタによる違いが見えて(聞こえて)きます。ハイレゾならこんな苦労はいらないのですが...。
Super Slow Roll-offの謎
なお、上記は44.1khz音源での話。ハイレゾならF-5 Super Slow Roll-offが良いと思います。ハイレゾの場合、高域をカットするデジタルフィルターが効くのがそもそも可聴域のはるか上ですから、デジタルフィルタを使う意味がありません。F-5 Super Slow Roll-offは、おそらくデジタルフィルターのバイパスモードかそれに近いと思われるので、余計なことをしない意味で選びたいです。
実は、このSupre Slow Roll-offは不思議なフィルターです。AK44xxのデータシート冒頭には6種のフィルターの1つとして明記されているのですが、このフィルターだけ、データシートのどこにも特性が載っていません。2012年にAK4495Sで導入された時からその扱いです。新しいなら積極的に宣伝すればいいのにと思いますが、実はフィルターではなく単なるバイパスモードだからかも知れません。AK4493のデータシート p.91の、以下の記載が唯一の手掛かりです。
SSLOW: Super Slow Roll Off (Digital Filter bypass mode) or Low Dispersion Filter Enable.
0: Disable (default)
1: Enable (see also SD)
0: Disable (default)
1: Enable (see also SD)
Super Slow Roll-offに関して説明と言えるのはこの一行だけ。ほんと不思議です!
その他気づいた点
デジタルフィルターについて、つい熱が入ってしまいました。E30自体に話を戻します。
- E30は動作中に音源のサンプリングレートが表示されます。どうってことないのですが、これが意外と気に入りました。どういうデータが出ているか確認できるからですかね。PCのJRiverで再生すると、設定などにより変換されたデータが出ている場合があるからかもしれません。
- USB電源ケーブルが一本余分に必要になるので雑然としてしまうかな?と思いましたが、これは予想外に気になりませんでした。よかったです。
- DoPならWindows10標準ドライバーで対応できますが、ASIOで動作させるにはネットからドライバーのダウンロードとインストールが必要です。DoPで困らないので、今回は見送りました。プライバシーとセキュリティ保護の観点から、余計なソフトは入れたくないですから。
- USB/COAX/OPTICALの3入力、PCM768khz/DSD512対応なので、普通に使うには困らないと思います。
- 使用前にファームウェアのアップデートを行いました。簡単です。
- MQAは非対応。私はMQAは売り手論理の無意味な規格と見なしているので、ない方がすっきりしていいです。MQAファイルは試しに買った1アルバムだけだし。(MQAが嫌いな理由は最後の最後に記載しています。)
おわりに
今回TOPPING E30を購入してみて、今後高額なDACのニーズは確実に減少すると感じました。低価格、高音質なDACとして非常におすすめです。CDレベルの音源ならメーカー独自のデジタルフィルターで特色を出せるかもしれませんが、ハイレゾでサンプリング周波数が高くなるとデジタルフィルターの出番はありません。素のデジタル - アナログ変換がきれいにできれば本当に充分です。ハイレゾを中心に聴く方であれば、もうこれで十分なんじゃないかな?高額なDACを追い求めるよりも、ヘッドホン・イヤホンに投資した方が色々楽しめると思います。
TOPPING E30はAmazonで入手可能です。
待ち時間が嫌という方はHiFiGOがいいと思います。中国から発送されますが、関税や追加の消費税もなく、日本に到着後はトラッキングも普通にでき、まったく問題ありませんでした。サイトには日本の場合5-8日で配送と書いてあり、私の場合は8日かかりました。
https://hifigo.com/collections/desktop/products/topping-e30-usb-dac-ak4493-hifi-decoder-desktop-dacs
ついでにMQAについて
以下にMQAのメリットが公開されています。
私がMQAを敬遠しているのは、主張が胡散臭いこととMQAフォーマット対応機器がないと再生できなくなってしまうことへの嫌悪感からです。後者は次第にMQAをサポートするプレーヤーが普及してきたので懸念は低下していますが、間接的にユーザーのコスト増にはなるでしょう(ライセンス料が含まれますから)。でも根本は前者ですので、そちらについて書いておきます。
- 自らの主張に都合の良い比較対象(192kのPCMでデジタルフィルタON)しか選んでいないことが根底。
- 192khzのインパルスレスポンスよりも波形がオリジナルに近いと主張しているが、192khzであれば再生時にデジタルフィルタは不要。その場合の波形は当然ながらオリジナルそのものなのでMQA「以上」。
- デジタルフィルターにも各種あるが、最もベーシックで、波形の乱れが大きいデジタルフィルターを主要な比較対象としている。
- DSDをCDと96kの間に位置付けている。2015年でもDSD64だけでなくDSD128,256はあったはず。
- 録音時のアナログ機器由来のノイズでデータの下位数ビットは意味がないというのは理解できるが、それはあくまでマイクによる「録音」というステップを踏む場合であり、電子楽器によるレコーディングを無視している。(これはMQAが生楽器やボーカルを含む音楽が対象というのであれば問題ではないですが。)
ということで、私はオープンなFLAC、DSDを取っています。Amazon Music HDがMQAを採用しないのは賢明なことと考えています。ライセンス費用も不要ですしね。
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