アンドロイドアプリの日本語化を担当しました - Physics Toolbox Sensor Suite

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ひょんなことから、先日ご紹介した科学教育用Androidアプリ「Physics Toolbox Sensor Suite」の、日本語化を担当しました。


きっかけは、先日のブログの記事。これを見たVieyra SoftwareのChrystianさんから機能に関するコメントをもらい、詳細をメールでやりとりしました。その途中でユーザーインターフェースの日本語訳をして欲しいと依頼され、喜んで引き受けることにしました。(この翻訳のため、ジョギングの時間は減りました。)

Physics Toolbox Sensor Suiteについて

簡単な操作で、スマホ内蔵のセンサー出力を、グラフや数値として表示・記録・共有できます。内容は他のソフトよりもかなり充実しています。例えば:
  • スマホ内蔵のあらゆるセンサーをサポートしている。
  • 複数のセンサーを同時に記録できる。
  • センサー計測以外にも、科学教育用の機能が色々と付いている。
  • デザインがとてもいい。
  • 不必要なアクセス権限が要求されない。電話、端末ID、通話情報など。
  • これだけ充実していて無料。アプリ内課金もない。
  • 海外の教育現場で使用されていて、ディスカッションの場もある。コミュニティはこちら(英語)。
  • アプリのアップデートがアクティブ。
  • 同種のアプリではほぼ最高ランクの評価。
  • 開発者の人柄が素晴らしく、信頼できる。
このソフトは、もともと理科・科学教育向けに開発されたようですので、理科や物理の授業の教材としてもおすすめだと思います。

▶︎ Physics Toolbox Sensor Suiteをダウンロード(Google Play)

日本語化は思ったよりも難しかった

さて、私はプロの翻訳者ではありませんが、スマホアプリのユーザーインターフェース程度なら、それほど苦労せずに翻訳できるだろうと思っていました。しかし、これがなかなか難しい!単純な単語の置き換えなら簡単なのですが、やってみるとそううまくは行かないのです。ちょっと舞台裏をご紹介しますね。

用語の厳密さと平易さのバランス

このアプリは教育分野もターゲットとしています。対象はおそらく中高生から。でも一般の技術者も使う可能性がある。となると、技術者向けの堅すぎる技術用語でも、平易すぎてもダメ。バランスをとらないといけません。しかも技術系のアプリなので、科学的・技術的に誤った簡略化もNGです。

シンプルにするか丁寧にするか?

最初この方針を決めるのに、しばらく悩みました。結局、メニュー項目はできるだけシンプルな表現とし、ユーザーへのメッセージは丁寧な表現にすることにしました。(ぶっきらぼうなメッセージは嫌ですよね!)。受け取ったXMLファイルでは、どの部分で使われているのかよく分からない文字列もあります。実際にアプリを操作しながら確認し、それでも分からないところは、メールで直接Chrystianさんに確認しました。彼もレスポンスよく丁寧な回答をくれたので、作業はスムーズに進みました。

対応する日本語がない!

さらに悩んだのは、元の用語にストレートに対応する日本語がない場合。いい例がg-Force Meter。これは、例えば1.2Gのように、センサーにかかる力を、重力加速度(G)に対する比で表示する機能です。このg-Forceの翻訳が難しい。
  • G力という日本語はない。
  • Gフォースも一般的ではないし、もしかすると商標かもしれない。
  • 重力加速度計は測定目的から考えると違う。
  • 単なる加速度計では、別の機能の直線加速度計と紛らわしいし、物理的に正確ではない。静止している時に0でなく1になるし。
散々悩んだあげく、単なる「G」としました。g-Force Meterは「Gメーター」となります。本来は自動車の加速度計を意味するようですが、これであれば、中高生も用途を直感的に理解できるのではないでしょうか? それでいて物理的に誤りでもありません。

意味はわかるが違和感あり

total g-Forceという用語がありました。うーん、トータルのGってなんのこと? じっくり考えてみました。ソフトウェアから見ると、最初にセンサーのX軸、Y軸、Z軸、それぞれの方向の測定値が得られ、それを合成した結果がGになる、というフローから、この表現になっているのでしょう。でも本来は(特に教育用途を想定すれば)最初に単一の物理量Gがあり、X軸、Y軸、Z軸、それぞれの方向の分力はそこから計算される、と考えるべきでしょう。

これはソフトウェア開発者と観測者(ユーザー)の見方の違いからきています。日本語版では観測者の立場を優先して、total g-Forceは単なる「G」とし、分力を「X軸方向のデータ」などとしました。「データ」よりも「力」の方が直感的ですが、磁力計のメニューと文字列を共用する設計のようだったので、抽象的に「データ」としています。どう考えても「トータルG」とか「統合したG」って日本語として異常な部類ですから。

ところどころに楽しいネーミングあり

「なぜここで技術的でない用語が使われるのだろう?」と頭をひねった部分がありました。意味がわからないと訳すことはできません。英語の隠れたニュアンスがあるかもしれませんからね。

Roller Coasterは、日本語でジェットコースターとストレートに訳せるのですが、なぜここでジェットコースター? おそらく、これを持ってジェットコースターに乗れば面白いデータが取れるよ、という意味だろうと思いました。メールでChrystianさんに確認したところ、やっぱりその通りでした。これで安心してジェットコースターと訳せます。

Pendulum Modeは近接センサーの一機能ですが、これもなぜ振り子(Pendulum)なのかわかりません。数値が次第に下に延びていく表示形式のことかと思ったら、振り子の下にスマホを置いて、振り子の揺れる間隔を測定するためのモードとのこと。こちらのレポートの3ページ目の写真を見て、一発で納得しました。なるほどね。日本語では「振り子測定モード」としました。「振り子モード」だと、見た人が何のことか分からないかも知れないので。

曖昧さをなくす

Sensor data collection rate (センサーデータの収集レート)という設定項目がありました。レートという言葉は、元々日本語でないこともあり、曖昧性のため、混乱につながる可能性があります(英語版のこの項目の選択肢が、そもそも適切な表現でなかったのも大きい要因でしたが)。日本語版では誤解の生じないように「センサーデータの収集間隔」にしました。関連する選択項目もスピードの表現から時間の表現に変更。

バグも見つけた

詳しくは書きませんが、致命的なバグも幾つか見つけ、Chrystianさんにも感謝されました。また、バグではありませんが、ソースコードに直接、文字列が書き込まれている部分も何箇所かありました。それらの部分の翻訳と、マイナーなバグの対処は、もうちょっと待ってとのこと。また、新機能を思いついて提案したら、Chrystianさんもちょうど考えていたところで、今後取り組んでいくそうです。どういう機能かは内緒です!

楽しかった!!!

Chrystianさんと私、短期間かつ初めてのコンビにしては、とても息のあった翻訳作業となり、楽しくやらせてもらいました。今思うと、うまくいった最大の要因は、お互いに相手を尊重し、感謝する心を持っていたことだったと思います。テクニカルなことは何とでもなりますが、メールによるコミュニケーションだけなので、お互いにいい印象を持っていなくては、気持ち良く作業できませんから。

次回チャンスがあれば是非またやりたいですね。

試してみてもらえると嬉しいです

そうそう、このアプリの日本語に問題があれば、是非私までおしらせください。ドキドキしながらお待ちしてます。Google Playでのアプリの説明が日本語化されていないので、日本で広めるには、そちらの日本語化も必要かもしれませんね。ダウンロードは下のURLから。ちなみに、同種のアプリではほぼ最高の評価のようです。

▶︎ Physics Toolbox Sensor Suiteをダウンロード(Google Play)


2 件のコメント :

  1. This is a wonderful reflection on the challenges of the task. Thank you for all you have done for Vieyra Software!

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    1. You're welcome. I really enjoyed it. Please feel free to contact me when you need another translation.

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